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2015.07.17

最後の晴れ着

ダンナが亡くなり、看護師さんがシャンプーし顔と体を拭き、ひげを剃って、ちょっとメイクでお顔を整えてくれるという。とは言っても、みんなが驚くほど、眠ったようにしか見えない顔。それにケアをしてくれる看護師さんたちが、うらやむくらいお肌つやつや。結局、唇にちょこっと紅をさしてもらうだけだった。

金曜日はいつもならシャワーに入れてもらってさっぱりしてるところなのだが、その日は朝からベッドから動かせない状態だったので、看護師さんたちが体を拭いて新しいパジャマに着せ替えてくれていた。
でも最後にいっぱい肺にたまってたらしきものを吐いちゃったので、パジャマが汚れてる。

「何を着せる?」 と聞かれて、洗濯したパジャマの替えを持ってこなかったことに気づいた。着せ替えるものがないし、一体何を着せれば? 悩んでいると、わが母が新しいパジャマを着せたらいいのよ。と言って、売店に行ってパジャマを買ってきた。ダンナはきれいにさっぱりしてもらった後、パジャマを着せてもらった。

ダンナは病院からそのまま葬儀場に運んでもらった。
葬儀社の人との打ち合わせは、21時くらいから始まった。病院でも看護師さんにしてもらったのだけれど、棺にきちんと入れる時の身支度は納棺師さんにお願いすることにした。
最後に何を着せるかと言う話になった。一昨年からいざという時のシュミレーションはいろいろしていたのだが、最後に着せる物のことまでは考えていなかった。会社はとっくに辞めてたので、普段の服はユニクロか無印、せいぜいエディーバウアー。それにエンジニアだったから、通勤着はシャツにチノ。一番高い服はたぶん山本寛斎のスーツだろうけど、若い頃に作ったから今はもう着せるのは無理、最近で一番高いのはトミー・フィルフィガーのTシャツだよな。

 
となると、カタログに載っている白装束だよねぇ。と思って眺めていたら普通っぽい着物がある。へぇ、普通っぽい着物があるのか……待てよ。確か結婚するとき作った安物の大島があるじゃない。結局一回も着なかったけど。せっかくだから、着せてあげよう。着物なんてダンナっぽくはないが、最後なんだから最高級の晴れ着を着せてあげよう。

ということで、翌朝(つまり通夜の朝)そそくさと朝食を食べ、着物箪笥を久々に開けた。姑の執拗なまでのお願いで、葬式ではわたしも着物の喪服を着ることになったし。

襦袢や羽織など着物一式を出し、母がしつけを取っていく。全部は使ってもらえないかもしれないけど、一応全部持って行こう。私の祖父の愛用品で、ダンナが譲り受けた菩提樹の実の数珠も入れて。おしゃれで贅沢好みの祖父だったので、いい値段するんだろうけど。

映画『おくりびと』のイメージがあったので、若い女性が納棺師としてやってきたのは驚いた。わたしが持って行った着物を見て、全部揃ってるから全部着せましょうと言ってくれた。六文銭やら付属品のために買った白装束は、その上からかけることになった。(六文銭と聞いただけで、胸がときめいてしまう腐要素たっぷりな妻を許して^^;)。

大島を着たダンナは、どうみても落語に出てくる大店の若旦那、いや年齢的にはもう旦那か……のようだった。おや、なかなか似合ってるじゃない。よかった。一番心配したのはバカ殿みたいになることだったんだけど、大丈夫。

それにしても納棺師さんの手際の良さはみごとだった。すごい。

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